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考察

AIで内製が進むと、SaaSはどう変わるのか

AIが普及すると、企業は業務ソフトを自分たちで作るようになるのか。Forbes JAPANの記事を読み、考えました。記事では、AIに代替されやすい機能を売る企業と、顧客の業務データを蓄積する企業を分けて論じています。

私は、自作できる機能が増えるほど、SaaSは運用や制度対応を任せる価値で選ばれるようになると考えています。AIで作る費用が下がっても、使い続けるための仕事は残るからです。その仕事を社内で担えるかどうかで、内製の進み方も変わります。

AIで内製しやすくなる仕事

単純な集計やデータ加工などは、AIで自作しやすくなる仕事だと思います。自社で使う機能だけを作れば、既製品に業務を合わせる手間も減らせます。その機能を使うためだけに契約していたSaaSなら、支払いを見直す理由になります。

ただ、職場で使うソフトには、機能以外にも作り込むところがあります。入力を間違えたときに戻せるか、初めて使う社員が迷わないか。こうした使い勝手まで既製品を超えるのは、私自身、簡単ではないと感じます。

運用と制度対応にかかる費用

顧客情報を保存するシステムなら、公開後もアクセス権限の管理、バックアップ、セキュリティ更新などが必要です。自社で作る場合は、AIやクラウドに任せる作業と、人が確認する作業を決めて、運用を続けます。

SaaSの料金には、契約によって、こうした仕事を任せる費用も含まれます。稼働率などのサービス水準を定めるSLAも、その取り決めの一つです。提供側が多数の顧客で運用を共通化できれば、一社ずつ維持するより安くなる余地があります。これが規模の経済です。

運用を任せられるデータベースを使って、内製する方法もあります。比較するときは、その利用料に、業務用の仕組みを組み立てて維持する時間も加えます。SaaS側にも設定やデータ移行の手間があるので、両方にかかる費用で考えたいところです。

制度とつながる仕事には、接続の手続きもあります。例えば、山梨県国保連合会の介護給付費の案内には、インターネット請求への変更届や電子証明書の取得手順が示されています。こうした接続への対応や仕様変更への追従を、既存サービスがどこまで担うかも、任せる理由になります。利用する事業者に残る手続きや責任は、別に確認が必要です。

内製を担う人の確保

内製の費用は、社内の人材によっても変わります。私がKazeで接している事業者の範囲では、AIで開発し、運用まで担える人はまだ多くありません。意欲のある人なら、数ヶ月ほど学んで実用的なものを作れる可能性は感じています。その学習時間を、日々の仕事の中で確保できるかも条件です。

採用して進めるなら、開発チームのない会社は、初めての職種を迎えることになります。開発できる人が、その会社の業務改善や保守を継続して引き受けたいかどうかも関わります。給与に加えて、仕事の内容、相談できる相手、裁量なども、双方ですり合わせる必要があります。

入社後は、仕事の進め方も調整します。例えば、作って試しながら仕様を決める開発では、最初に完成形を確定する仕事とは予算や予定の立て方が違います。経営者や現場の社員も、その進め方に慣れる時間が必要でしょう。開発にかかる費用が下がっても、こうした採用や社内調整の時間は見込むことになります。

AIとSaaSを組み合わせる使い方

このため、私は、業務の一部を内製しながらSaaSも使う形が広がると考えています。例えば、データの保存はSaaSに任せ、社内向けの集計や報告書をAIで作る構成です。連携機能があれば、既存のデータを使ったまま、自社の仕事に合わせられます。

MCPは、AIが外部のツールを呼び出す仕組みを定めています。対応するSaaSなら、人が画面を操作していた仕事をAIに任せる使い方も考えられます。この場合、操作する手間は減っても、データを保存し、処理を実行するサービスは使い続けます。

SaaSを提供する側は、個々の機能をAIで作れるようになっても、料金に見合う手間を引き受けられるかが問われると思います。運用を任せる需要が残ることと、今の価格や人数課金が続くことは別です。

これは現時点での見方です。AIに任せられる運用作業が増えたり、社内で扱える人が増えたりすれば、自分たちで作る方がよい仕事も増えるでしょう。その変化に応じて、内製とSaaSを比べる条件も変わっていくと考えています。

AI活用の進め方を相談する

Kazeでは、今の業務や利用中のサービスを伺い、AIで作る部分と既存サービスを使う部分を一緒に整理します。必要に応じて、開発から運用までお手伝いします。

「どの業務から試せばよいか」「社内に開発できる人がいない」といった段階でも、ご相談ください。

AI活用について相談する

執筆者:中村 仁

株式会社Kaze 代表取締役。エンジニア。和歌山を拠点に、事業者のAI活用とシステム開発を支援している。本稿は、2026年9月22日時点の経験と情報に基づく、筆者個人の見解です。