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技術

ホンダのサブカルAI活用コーナー

AIならゲームも簡単に作れる? 作ってみたら、「売れるレベル」までは結構距離があった。

本多 匠|株式会社Kaze エンジニア

普段は株式会社KazeでWebやAIの開発をしている本多です。今回は「AIを使えばゲームも簡単に作れるらしい」と聞いて、ゲーム制作に初挑戦しています。

コードを書く仕事はしていますが、ゲームを作るのは初めて。動くものを作ることと、自然に動いて、迷わず遊べて、物語も楽しめるものに仕上げることには、思った以上に距離がありました。

作っているのは「黒猫と魔女」。黒猫が森で素材を集めながら、魔女と関わっていくゲームです。採集する仕組みはありますが、目指しているのは二人の物語を楽しめるものです。

現在は、序盤を遊んで直している段階です。ここでいう「売れるレベル」は、商品として楽しんでもらえる完成度のことです。今回は、そこへ近づける難しさを知った制作途中の話です。

まず魔女のモデルが思い通りにならない

最初は、CodexかClaudeに頼んでおけば、3Dモデルも何とかなるだろうと思っていました。

2Dの魔女の絵は、画像生成で気に入るものができました。静かな表情に、柔らかい髪。この絵を参考にして、3Dモデルを作ってもらいます。

Codex側では、3D制作ソフトのBlenderをプログラムから操作し、輪郭や髪、目、衣装を組み立てる方法を試しました。Claudeにも同じ絵を渡し、同じカメラの位置で比較します。

結果は、どちらも再検討。

元の絵の雰囲気に届かず、頭身や髪の生え方、結び目などを調整することになりました。さらに、ゲームで使う見下ろし視点にすると、帽子が顔を隠してしまう。せっかく作った表情を、帽子がしっかり守っています。

会話で見せたい絵と、ゲームの中を歩く小さなモデルでは、必要な見え方が違う。そのあたりから考え直すことになりました。

気に入った2Dの魔女の絵。画像生成で作った外見案です。同じ絵を参考に作った初期3Dモデル。左がCodex、右がClaudeです。
同じ原画を基にした初期の比較。元の絵の雰囲気を3Dへ持ち込むところから、試行錯誤が始まりました。

試行錯誤しているうちにTripoを知る

そこで知ったのが、画像から3Dモデルを生成するTripoです。

正面から見た魔女の画像を用意して、Tripoで立体にする。その後、CodexでBlender上に仮の骨組みを入れ、立つ、歩くといった動きを試しました。

今回の制作では、Tripoを使って、ようやく求める見た目に近づけられました。ただ、生成したモデルをそのままゲームに置けば完成、とはいきません。帽子で顔が見えない問題や、体を動かしたときの変形、地面に合わせた足の位置などは、引き続き調整が必要です。

Tripoで生成したモデルに、仮の骨組みと材質調整を加えた試作です。
Tripoを使い、求める見た目に近づいた魔女。ゲーム内での見え方や動きは、ここから調整しています。

それでも、見た目ができたのは前進です。これなら猫もいけるのでは。そう思ったのですが、今度は動かすところで、また苦戦することになります。

猫らしく座らせるのが難しい

3Dの猫を動かすには、骨組みと、その骨に合わせて体のどこがどれだけ動くかという設定が必要です。

ここで難しかったのは、猫らしい姿勢にすることでした。人間と同じように考えて骨格を入れても、猫らしく座ってくれません。体は曲がる。でも、それが猫の座り方に見えるかは別でした。

猫に座ってもらうだけなのに、なかなか猫にならない。

初期のCodex製猫モデルの座り試作。胴体が起きすぎ、前脚が床から浮いています。
初期のCodex製モデルで、座り方を試していたときの3Dレンダー。胴体を起こしても、前脚が浮いて猫らしい姿勢にならず、作り直した案です。

背中や腰、後ろ足がどうつながって動くかまで考える必要があります。そこでClaude側で骨組みと体の変形を調整し、座る、横になるといった姿勢を作り直していきました。

見た目が猫のモデルでも、動かし方まで猫らしくなるわけではありません。静止画では気にならなかった部分も、姿勢が変わると違和感が出てきます。猫の動きはまだ未完成です。最近も歩き方を調整していますが、まだ自然に見えるかを確認しているところです。

声には未来を感じた 音楽はまだ難しかった

声も付けてみたいと思い、音声合成のTTSについて調べてみると、ずいぶん発展していることを知りました。どうせならローカルで動かしてみようと、今回はIrodori-TTSを使っています。

これが、未来を感じずにはいられない出来でした。

用意したセリフを、自分のパソコンで声にできる。文字だけだった魔女とのやり取りにも、こうして声を付けられます。

もちろん、そのままですべて自然に聞こえるわけではなく、句読点や語尾、話し方を変えて調整しています。それでも、ここまでできるのかという驚きがありました。

こちらは、制作中のゲームで魔女が話すセリフです。ローカルのIrodori-TTSで作った既存音声を、そのまま載せています。文字と一緒に、声の間や語尾も聴いてみてください。

猫を安心させる魔女のセリフ:「大丈夫。すぐ片づけるね。」
猫を安心させるセリフの音声を開く
花を見て初日を思い出す魔女のセリフ:「ああ、この花ね。あなたがここで目を覚ました日にも、飾ってあったんだよ。」
花を見て初日を思い出すセリフの音声を開く

音楽も作らせてみたのですが、こちらはさすがに難しかった。

今回はプログラムで音を並べて曲を合成する方法を試しましたが、ゲームに使いたいBGMにするところまでは届きませんでした。そこで、フリー配布されているBGMを探してもらい、既存の楽曲を使う方向にしています。利用条件やクレジット表記も確認が必要なので、「フリーだから何でも自由」というわけではありません。

声には未来を感じつつ、音楽は既存の楽曲に助けてもらう。今回はそんな使い分けになりました。

おしゃれなUIとは何なのか

こうして作ったものを、Three.jsという3D表示の仕組みを使うブラウザゲームに組み込み、Codexで処理や画面を調整しています。

そこでまた困ったのが、持ち物や操作案内などを表示するUIでした。

WebのUIについて考える機会はありますが、ゲームでは、移動中に何を見せるか、どこまで案内するか、世界観を邪魔せず情報を伝えるにはどうするか、といった判断が必要になります。今回のゲームに合う完成図を最初から描けていたわけではなく、「もっとおしゃれに」「ゲームらしく」といった曖昧な頼み方になってしまいます。すると、できあがったものも、どこかAIに作ってもらった感じがする。

でも、どこをどう変えればいいのか、こちらもすぐには言えません。「おしゃれに」と言っている本人の指示が、一番ふわっとしています。

実物を見て、遊んで、ようやく言葉にできることが増えてきました。例えば、文字を置く背景を木の板のようにする。持ち物はアイテムの絵を中心にして、右上に個数、下に名前を添える。薬を作る画面も、長い文章より、絵と必要な数でわかるようにする。

こうした具体的な指示を出しながら、少しずつ直しているところです。まだ満足する画面には届いていませんが、「何となく違う」だけだったものが、「ここをこうしたい」に変わってきました。

遊びやすさも同じです。魚を拾った後の行き先、木で隠れる道、背景に紛れる採集素材。実際に操作して迷うことで、どこに案内や目印が必要なのかが見えてきます。セーブや画面の切り替えも含め、実物を触って確かめる作業が続いています。

没案となった旧開発版のUI。持ち物や薬作りの情報を右側に表示しています。
いかにもAIっぽい見た目になってしまった、没案のUI。完成イメージを伝えきれず、ここから調整を重ねました。

作っている間にもAIが進化していく

こちらがゲーム作りに苦戦している間にも、AIの方はどんどん新しいものが出てきます。

今回の制作中には、OpenAIのdotも使うようになりました。パソコンをつないで作業を頼んでおくと、自分が寝ている間にも開発が進む。起きたら確認して、また修正をお願いする。そんな進め方もできるようになりました。

もちろん、起きたら全部思い通りに完成している、ということではありません。実際に遊んでみると、直してほしいところはまだ出てきます。それでも、自分がずっと画面の前にいなくても作業が進んでいるのは、なかなか不思議な感覚です。

当初はAstraを中心に使っていました。OpusやGPT-6.1 Solなど、いろいろな選択肢を試しているうちにも、新しいモデルや機能が出てくる。ゲームの完成より、AIの進化の方が速いのでは、と思ってしまいます。

森を横向きに歩く黒猫。後ろ足の開き方など、動きはまだ調整中です。
制作中の「黒猫と魔女」。序盤を実際に遊びながら、修正を重ねています。

動くものから楽しめる作品へ

ゲームはまだ未完成で、歩き方や表示、操作、処理の重さなど、修正と確認が残っています。

今回わかったのは、AIを使って動くものを作ることはできても、商品としての完成度へ近づけるには、別の難しさがあるということでした。猫が自然に座ること、次の行き先がわかること、画面が見やすいこと。どれも遊ぶ側には当たり前ですが、作る側になると一つずつ判断が必要です。

WebやAIの開発経験があっても、ゲーム制作で初めて考えることは多くありました。自分の中に完成像や判断基準がない部分は、AIへの指示も曖昧になります。そこは実物を見て、調べて、学びながら具体的にしていくしかありません。

逆に、ゲームづくりの知識や経験があるクリエイターなら、何をどう直すかをもっと的確に判断できるはずです。そうした人がAIを活用すれば、より良いものを作れるのではないかとも感じました。

「簡単に作れる」と聞いて始めたら、「売れるレベル」までは結構距離があった。でも、思いついた黒猫と魔女の物語が、実際に動く形になってきたのは面白いところです。

次は、動いているだけでなく、自然に動き、気持ちよく遊べて、二人の物語も楽しめるものへ。まだまだ学ぶことは多いですが、遊んで直しながら、少しずつ近づけていきたいと思います。

書いた人

本多 匠

株式会社Kaze エンジニア。Web・AI開発に携わりながら、今回はゲーム制作に初挑戦中。

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